【香港ローカル ニュース Vol. 77】

「コロナ疲れ」を英語では “CoVid-19  fatigue”と言うそうですが、世界中の人が疲れだけでなくストレスもイライラも溜め込んでいることでしょう。香港ではフィリピン女性(その他インドネシア人・ネパール人も多いです)の住み込みのメイドさんを雇って共働きしている家庭も多く、児童の送り迎えや老齢の父母の介護に当たらせているのも普通です。そんなところへ国際空港に一番近い郊外住宅地である東涌(Tung Chungとん・ちょん)のフィリピン人メイドが変異種ウイルスに感染していることがわかり、個人行動よりも集団行動を好むフィリピン人への人種差別的な偏見とも言える風潮が、コロナ疲れで呼び起こされています。

フィリピンの人は、メイドの仕事が休みになる土・日には、その多くのカトリック信者が教会のミサに出席しますが、密集したミサは今も続いています。聞いた話ではミサの間マスクを掛けていても座席のソーシャルディスタンスは守られていないそうです。そうした状況を見て、95%以上を占める大多数派の中華系住民は文化の違いでもあるフィリピン人の集団行動に眉を顰めているようです。

東涌Tung Chungのフィリピン人メイドと、佐敦Jordanのインド系香港居民男性のウイルスは同じ配列のDNAと判明。専門家の袁國勇は「変異ウイルスはローカルコミュニティーに既に伝染している」と警告。

変種コロナウイルスが香港を襲い、東涌のマンション群である映灣園Caribbean Coast に住み込みのフィリピン人メイド(感染事案例第11773号)が香港ローカルの変異ウイルス感染の最初の事案と疑われているが、その感染源は一向に明らかになっていない。しかし、香港大学および理工大学でのDNA配列の解析結果が5月1日に発表され、このフィリピン人メイドと、ジョーダンのパークスビル居住のインド系香港住民の男性とは、南アフリカ型の変異ウイルスに感染しており、両名のウイルスのDNA配列は100%同じであった。つまり、ウイルスはインド系住民男性がドバイから香港に戻って感染確認されるまでの14日間でジョーダンから東涌にまで伝染していたことになる。

香港大学微生物学部客員教授の袁國勇は、「今回の発見は変種ウイルスが既に一般社会に入り込んで伝染していることを示すものだ」と述べている。南アフリカ型の変異種は伝染力が更に高い。

南アフリカ型の変異ウイルスは既に一般社会に伝染しており、この変異型は伝染力が極めて高いと、袁國勇は指摘している。(資料映像/撮影:廖雁雄)

袁國勇の示すところによると、香港大学のDNA配列解析によると、東涌のメイドとドバイから香港に戻りジョーダンのパークスビルに滞在しているインド系香港住民の男性は同様に、南アフリカ型変異ウイルス(B.1.351)に感染しており、両者のウイルスDNAは一致している。理工大学医療技術情報学部の助教授蕭傑恒Dr. SIU, Gilman K. H.はコメントの中で、同大学のチームによる遺伝子配列の解析結果でも同じように、このフィリピン人メイドと、メイドが世話をしている10ヶ月の女子赤ちゃんともに南アフリカ型変異ウイルスを持っていることが判り、またインド系住民男性のDNAと完全一致したとの結果だった。

理工大学医療技術情報学部の助教授蕭傑恒Dr. SIU, Gilman K. H.‎(右)(zoom映像より引用)

袁國勇はさらに、「香港でこの数ヶ月来感染確認された事案で感染していたのは感染拡大第四波に属する「ネパール系」ウイルス種であったが、今回の二件は別の「南アフリカ型変異ウイルス」が既に一般社会に流れ込んでおり、伝染拡大していることを反映している」と指摘している。南アフリカ型変異ウイルスは伝染力が更に強い。

▼4月29日、東涌Tung Chungのマンション映灣園カリビアン・コーストの第11棟「悅濤軒Carmel Cove」が封鎖検疫対象となり、新型変種ウイルスの事案となった(画像の示すようにビル全体の住人が警察と衛生局職員の指示の下、指定隔離場所へバスで移送されて、PCR検査や発熱の有無などの強制検疫を受ける)▼

「今回の二件の事案は、ボーダーコントロールに検疫手配に見落としがあった恐れを反映している」と袁國勇は見ており、「サンプル採取・検査が両方とも偽陰性を示していたと思われるため、政府は新たな施策を打ち出して、民間の化学検査センターの現場に人を送り検査センターの業務の監査判定をすべきであり、また陰性の報告に対しても抜き取りサンプルで再検査をするなど、偽陽性・偽陰性を極力減らすべきだ」と述べた。

更に、「政府はつい最近に検疫を済ませた人についても遡及的に調査を行うと同時に、抗体検査を、特にラマダグループのホテルの検疫対象の人々に実施すべきだ。香港在住のすべての外国人住み込みメイドに検査を受けさせるという香港政府の方針に対して、大規模なテストを行うことは迅速かつ多層的なトラッキング調査に代わるものではなく、トラッキングこそが感染連鎖がどのように発生したかを探り出す確実な方法だ」と強調している。

▼去る4月16日にインド系香港住民が滞在していた佐敦伯嘉士大廈(ジョーダン・パークスビル)で建物封鎖強制検疫が行われたときの様子。変種ウイルスの感染強制隔離対象の事例としては最初のものとなった▼

第11,643件目の事案[香港ではコロナウイルス感染者は全てシリアルナンバーが付けられてファイルされ、メディアでもそのように報道される]では、インド系男性は仕事先のドバイから3月19日に香港へ戻り、尖沙咀(チムサーチョイ)区のラマダ香港グランドホテルで21日間の検疫隔離を過ごし、4月9日に検疫隔離が終わるとジョーダンのパークスビルに滞在していた。本人の自発的なサンプル採取が提出されて4月16日に最初のステップの感染確認がされた。一般社会に8日間滞在していたことになり、その間佐敦ジョーダン・尖沙咀チムサーチョイ・(離島の)長洲を行き巡っていた。

第11,773番の事例は39歳の女性で、東涌Tung Chungのマンション群映湾園Caribbean Coastのブロック11である悅濤軒Carmel Coveを住まいとするフィリピン人メイドで、この二年間香港から出た記録はない。平日は主に青衣Tsing Yi Islandと東涌Tung Chung 一帯が行動範囲で、4月23日に発病し、4月29日に最初のステップでの感染確認をされている。インド系男性が隔離された日(4月16日)から東涌のフィリピン人女性が隔離された日(4月29日)までを計算すると14日間でウイルスがジョーダンから東涌まで到達していたことになる。

ニュースソース:『香港01』 から 

文章:鄭翠碧記者  2021-05-01 17:37 最終更新日時:2021-05-01 22:03‎

https://www.hk01.com/%E7%A4%BE%E6%9C%83%E6%96%B0%E8%81%9E/619682/%E6%9D%B1%E6%B6%8C%E8%8F%B2%E5%82%AD%E8%88%87%E4%BD%90%E6%95%A6%E5%8D%B0%E8%A3%94%E7%94%B7%E7%97%85%E6%AF%92%E5%9F%BA%E5%9B%A0%E7%9B%B8%E5%90%8C-%E8%A2%81%E5%9C%8B%E5%8B%87-%E8%AE%8A%E7%A8%AE%E7%97%85%E6%AF%92%E6%96%BC%E7%A4%BE%E5%8D%80%E5%82%B3%E6%92%AD?utm_source=01appshare&utm_medium=referral&fbclid=IwAR3G5SYCQytN_zRcTuMX7Xw0bx5xw_4j9p1VggHugeB31Ry9oNYrDNsjGn4