【香港ローカル ニュース Vol. 14】

3つの方法で過度の肥満を防止 規制を増やして医療費を削減

香港の衛生局の資料によると、現在、香港の15歳から84歳までの5割の人間が、肥満もしくは重度の肥満のどちらかに分類されるという。しかし香港政府は、メーカーなどと協力して健康的な食事の宣伝やキャンペーンを行ってはいるものの、英国政府のようにカロリーの上限を示すなど具体的な対策をしていない。また他国のように、食品に砂糖・ナトリウム・脂肪の含有量を示す必要もないのが現状である。

食生活改善委員会は「食品成分表示ラベルの義務付けがマイナスに働くことを懸念し、業界が自発的に表示をするよう薦めるに留め、消費者が油分・塩分・糖分等の成分情報を知ることにできるようにしたい」と述べている。

出典:信報(香港経済ジャーナル)電子版より 2019年10月28日「評論ページ」から

https://paper.hket.com/article/2483747/3%E6%8E%AA%E6%96%BD%E9%98%B2%E7%99%A1%E8%82%A5%20%E5%A2%9E%E8%A6%8F%E7%AE%A1%E6%B8%9B%E9%86%AB%E7%99%82%E9%96%8B%E6%94%AF?mtc=70017

経済協力開発機構(OECD)の最新レポートによると、過度の肥満防止は1米ドル相当の予防費用で5倍の効果がある。香港政府もまず3つの措置から着手すべきではないだろうか。香港でも肥満の問題は日増しに深刻となっているが、現時点では自発的な取り組みや健康的な食生活習慣が紹介されている。

同レポートによると2010年から2016年の間で成人の極度の肥満の割合は21%〜24%の増加が加盟国で見られており、これが原因で2050年には平均寿命が約3年縮まるという。しかし、1米ドルの予防施策で5米ドルの経済効果が得られるかもしれないという。食品の栄養表示ラベルの管理、メニューへのカロリー表示なども有効な政策であり、製造メーカーが食品成分を改良するよう進めるのも有益だという。

しかし一般的には、食品パッケージの栄養情報を見たがらない、あるいは内容を理解できない人も多い。イギリスでは食品中の脂肪や飽和脂肪酸や塩分の含有量を元にして、赤(高)黄(中)緑(低)の簡単な表示にしているが、メーカーの意向に任せており、強制実施のシンガポールとは異なっている。

栄養情報ラベルの管理 材料成分改良を促す

ラベルの表示内容を分かり易いものにするほか、海外では外食する場合でも人々に知る権利を与えている。米国のレストランではメニューにカロリーや一日当たりの推奨摂取カロリー(2,000キロカロリー)などを載せている。ハーバード大学教授セイラ・ブライクの研究によると、メーカーが材料成分改良をしたことでレストランの食品のカロリーも1年当たりで12%、約6万カロリーが減少した。

OECDが食品メーカーの成分に注目する一方、過去には砂糖税の措置などを訴え、英国政府は今年の初頭に、各食品にカロリーの上限を設けることを発表した。例として、レストランの主菜は951キロカロリーを超えてはならず、持ち帰りのファストフードは544キロカロリーを超えてならないなど、2024年までに市場の食品のカロリーを2割減らすことを目標にしている。

香港の衛生局の資料によると、香港の15歳から84歳までの5割の人間が、肥満もしくは重度の肥満のどちらかに分類されるという。食品のカロリー表示に関しては、前食品衛生局局長であった高文永氏が2016年に、公立病院の職員食堂の8割でカロリーを表示する計画を先行して実行し、メニューにカロリー情報を載せたことがあり、「業界に同じような取り組みが広まることを期待している」と発言していた。 

香港では自発性を主に 強制よりも効果的

香港政府は、メーカーなどと協力して健康的な食事のキャンペーンを行っているが、英国政府のようにカロリーの上限を示すなど具体的な対策をしていない。また他国のように、食品に砂糖・ナトリウム・脂肪の含有量を示す必要もない。

食生活改善委員会は「食品成分表示ラベルの義務付けがマイナスに働くことを懸念し、業界が自発的に表示をするよう薦めるに留め、消費者が油分・塩分・糖分等の成分情報を知ることにできるようにしたい」と述べている。

肥満防止の措置は自発的なものであり、政府は定期的に、どれぐらいのメーカーが参加しているのか、成績の評価をチェックするべきである。また、その分析結果によっては、諸外国のように規制を強化すべきなのか、実施を強制にするべきなのかを調査し、肥満の問題を改善し、結果として肥満に関連する医療支出を減らすべきだろう。

OECDの資料による予防対策の支出と経済効果

「寿命が伸びる」

食品成分やメニューの栄養表示をすることで加盟国メンバー国全体で5.1万年から11.5万年の寿命を延ばすことが出来る。これはEU加盟国の全体の交通事故死亡による寿命数に匹敵するという。

「経済効果」

‎メニューのカロリー表示をするだけでも2020年から2050年までに130億米ドルの経済的コストを削減できる。‎

‎「医療負担」‎

加盟国が現在の消費カロリーを2割減らすことが出来れば、GDPを毎年0.51%上昇させ、医療費支出を0.21%減少させ、毎年110万件の慢性病を予防できる。‎

撰文 : 沈帥青