【香港経済を追え vol.20】

▶︎経済関連ニュース:『海南島経済特区の自由貿易港総合スキーム』の概要(その一)

海南島をまるごと経済特区として発展させる計画について、6月1日にその全容が発表されています。海南島は1,000万人が暮らす、平地部分が3.5万平方メートルの中国最大の島です。広東省から分離されて1988年に海南省となり、2008年に経済特区に指定されました。旧英国植民地だった香港と同じような自由貿易港のシステムを、中国政府が短期間に開発しようとする試みであり、香港行政特区の比類ないアドバンテージを引き下げ、そのバランスを取るべく代替機能を持つ都市を建設しようというもののようです。
 地政学的にみると、日本と領土権争いをしている尖閣諸島は、2012年、この海南省で新設された三沙市に取り込まれた形になっており、海南島を中国の最南端の水上輸送と軍事拠点として、単なる経済特区としての機能だけではないと考えてもよいと思われます。

今回のニュースソースはhk01「香港ゼロワン」という中国語ニュースサイトで、この海南フリートレードポート構想大綱が紹介する記事です。今週は、まず前半部を日本語にて読んでみます。この香港のニュースサイト自体は、大陸の官製メディアのニュースサイトからの転載です:
《澎湃新聞》The Paper  https://www.thepaper.cn/list_25432 「自貿港連線(オンライン)」

海南自由貿易港(フリートレードポート)構想 12の際立っている点:
税率は香港・シンガポールに肩を並べるレベルとなり、全島が関税なしのショッピングパラダイスに

〔ニュースソース:〕

最終更新日時:2020-06-02 12:23

https://www.hk01.com/%E8%AD%B0%E4%BA%8B%E5%BB%B3/480673/%E6%B5%B7%E5%8D%97%E8%87%AA%E8%B2%BF%E6%B8%AF12%E5%A4%A7%E4%BA%AE%E9%BB%9E-%E7%A8%85%E7%8E%87%E6%AF%94%E8%82%A9%E9%A6%99%E6%B8%AF%E6%96%B0%E5%8A%A0%E5%9D%A1-%E5%85%A8%E5%B3%B6%E9%9B%B6%E9%97%9C%E7%A8%85%E6%88%90%E8%B3%BC%E7%89%A9%E5%A4%A9%E5%A0%82

公表されたスキーム全体内容の簡体字中国語原文は、下記の中華人民共和国中央政府の公式サイトで確認できます。

http://www.gov.cn/zhengce/2020-06/01/content_5516608.htm

6月1日(月曜日)に、『海南(島経済特区)自由貿易港建設総合スキーム』(以下、海南自貿港)の全文が公開され、島全体がいわば“出島”のごとく行政上特別な扱いの地区となること、ゼロ関税の導入、個人所得税の上限を15%に抑えることなどの措置に関心が集まった。中国大陸の官製新聞サイト《澎湃新聞》The Paper 〔質問欄などもあり、ネット上で官製の公式模範解答を尋ねることができる〕は自貿港の政策の際立っているポイント12項目を整理して、更に国際的に知名度の高い自由貿易港との比較をすることで、海南自貿港税制が既に万全たる競争力を有しているという、官製メディアらしい結論を伝えている。

《澎湃新聞》The Paperの「自由貿易港構想オンライン」ページ:(簡体字中国語)

https://www.thepaper.cn/list_25432

1・島全体が自由貿易港

海南自貿港の範囲はどのように設定されているか、事前の推測は意見が分かれ、専門家の一部は海南島全体自由貿易区として線引きされても、島全体が自貿港にグレードアップする可能性はまずないと見ていた。6月1日の発表で疑念は払拭され、海南自貿港の実施範囲は海南島全域となった。

2・一線開放、二線管理  ※一線=ボーダー内の特区そのもの、二線=特区と内陸部を隔てる緩衝地域

いわゆる「一線開放」とは、海南自貿港と国家港湾税関ボーダーとの間の管理手順部分が自由化されることを指す。輸入品目リストで制限を掛ける以外には、絶対多数の輸入品目は自由に入荷でき、輸入関税課税対象外とする。

経済活動が自由化される特区として一線のボーダーが敷かれると、資本主義の香港に隣接する深圳(シンセン)経済特区の北側に所在している東莞や珠海でかつて行われていたように、「二線でのボーダー管理」、つまり特区と内地を隔てるボーダーで新たに管理部分を設ける。貨物を海南自貿港から持ち出して内国貨物とするには、原則として「二線」にて輸入規定に従った関連手続を行い、法規に照らして関税と輸入手続一連の税目が徴収される。

3・全島の行政上分画

今回の海南自貿港の政策の際立ったポイントの一つは、「全島を行政上外縁の土地から隔絶分画した閉鎖地区として特殊な税関監督運用を施す地域」を建設することで、海南島の場合は、島の自然のボーダーが上記の「二線」の役目をする。今回の総合スキームに拠ると、海南省は2025年までに全島分画運用の準備作業を整え、全島の分画閉鎖運用システムをいつでも起動できるようにもって行く。「準備作業」というのは、一連の許可不許可項目のリストを作成することであり、例として輸入関税課税商品リストや輸入制限対象品目リストなどが挙げられる。海南自貿港の自由の程度は、ひとつの判断基準として、関連するリストに含めるべき貨物品目の数量で決まることになる。

中央政府が海南島に自由貿易港パイロット区を建設設置すると発表してから、海南島では一連の対外開放措置が次々に出された。現在でも海南島はロシアからの観光収入が多い。(資料映像)

4・ゼロ関税

海南自貿港は「ゼロ関税」を基本的な特徴として、自由化・至便化の制度の整備と実行を行う。「ゼロ関税」を実施する貨物について、税関は従前の法定管理監督を免除する。

注目に値する点として、海南島全域が特区として隔絶分画運用になる前の時点から、一部輸入商品については、輸入関税や輸入手続に関わる増値税〔日本でいうところの「消費税」に該当〕や消費税〔中国大陸の「消費税」は一部の指定贅沢品の売買に掛けられる税目〕などが課税免除になる点。全島に行政分画運用が始まると、輸入関税対象商品リスト以外で、海南自貿港輸入許可品目に含まれるものは、すべて輸入税免除となる。

5・税制の簡便化

経済特区としての隔絶分画が始まってから、所得税・関税以外の、一連の輸入手続の増値税・消費税などの諸税公課が免除になるのか否かを当スキームは述べていないが、「輸入関税徴収免除」と統括して呼んでいるものがあり、これがつまりその時までには完成しているはずの「簡便化税制」にあたる。つまり、全島が分画運用されると同時に、法に従い、現行の増値税・消費税・自動車購入税・都市維持保護権節税、教育費付加税などの税目が簡便化される。

この総合スキームが提示しているところでは、海南自貿港は「ゼロ関税・低税率・簡易税制・法治強化・段階的運用」という原則に従い、徐々に高レベルの自由貿易港に相応しい徴税制度〔歳入手段〕を建て上げていくとしている。

税制簡便化は中国税制の改革方向にも合致したもので、このほかにも、総合スキームは海南自貿港では間接税の比率を下げるとしている。これにより海南自貿港は世界市場での競争力を高めることになるとしているが、現今の国際的なハイスタンダードの自由貿易港でも税制面での特徴は税率の引き下げの傾向にある。

6・島内免税購入

2025年までに、海南自貿港は島内居住者が消費する輸入商品についてプラスの〔例外の列挙ではなく、適用商品名のほうを列挙する〕一覧表管理を実行し、島内での購入を免税とする。

7・海南島産の貨物を内地に移動させる際にも関税免除の可能性あり

原則として、全島分画「二線」〔上記のように、特区と内地を隔離する国内のボーダー〕の設置がされると、貨物が海南自貿港から内地貨物に移される際、通常ならば、輸入規定に沿って所定の手続きがされ、法律どおりの関税と輸入管理税が徴収される。

しかし、今回の総合スキームの際立ったポイントとして、奨励対象グループの産業企業が生産する製品で、輸入部品を含んでいないもの、あるいは輸入部品ではあるが海南自由貿易港での加工による付加価値が30%またはそれ以上の貨物は、「二線」を経由して内地に移す場合でも輸入税は免除するが、輸入手続に関連する増値税・消費税は規定どおりに課すると定めている。簡単にいえば、貿易港内の奨励対象グループの企業が生産した指定商品は輸入税免除で国内に持ち込めるということであり、このような消費を刺激する政策はこれまでに中国にはなかったことである。

中国国内メディアの分析によれば、海南自貿港スキームの中では法人所得税と個人所得税に対して示す優遇税率は注目すべきところで、香港・シンガポールに比肩するもの。
写真は、香港の税務局Inland Revenue Departmentのカウンター

※香港の所得税は、法人個人どちらも、課税対象も税率も簡明であり、税法が簡単な分、すべての有限公司(株式による有限責任会社)に公認会計士による法定監査が課されているため、税務当局による「立入調査」は事実上ない。税務上の公正は民間の公認会計士である会計監査人に依る部分が圧倒的に多い。はたして、そのような法治と連動した税制が中国国内で実現できるか否かも注目されるところである。