【香港ローカル ニュース Vol. 46】

日本語メディアでも「コロナ後」を心配する意見をネットで見かけますが、香港ではコロナ禍に加えて「国家安全法の施行後」の影響を憂う意見や予測が各種メディアに出ています。

『信報財經月刊 Hong Kong Economic Journal Monthly』(以下、HKEJM)第520号では既に七月号の時点で「さらば!香港~マージナルな政治の急変 金融センターの失墜」というセンセーショナルな表紙で香港の激変を予告するものでした。最新号の八月号第521号では編集長巻頭言として「東京・ロンドン・ニューヨークが香港の動揺を衝いて金融センターである香港の役割を奪おうとしている」という結論の文章を載せています。雑誌の内容は後日レビューを日本語でお送りします。

今回は、香港記者協会の代表者である議長が『国家安全法』などの政治的対立要因が香港を凋落に招いていることを懸念しているという『星島日報』の記事を紹介します。因みに、同記者協会のウェブサイトでは、コロナ禍の下、ジャーナリストに対しても「ワーク・ホーム」を呼びかけています。取材するのにも人の移動が伴うので、情報収集が難しそうな模様です。

香港記者協会(*注)議長が『港区国家安全維護法』などの政治的対立要因の登場により、香港が斜陽凋落の影を見せているのではと憂慮の声

*注1:香港記者協會[会]Hong Kong Journalist Association (本部は香港島ワンチャイ。以下、記協と略称。) これとは別に、香港には香港外国人記者クラブという組織がある(本部はセントラルの蘭桂坊ランクワイフォンからすぐ近く)。‎

ニュースソース: 「頭條日報」Headline Daily (フリーペーパー), 「星島日報」Sing Dao Daily(同系列の有料日刊紙)

https://hd.stheadline.com/news/realtime/hk/1835392/%E5%8D%B3%E6%99%82-%E6%B8%AF%E8%81%9E-%E8%A8%98%E5%8D%94%E4%B8%BB%E5%B8%AD%E6%86%82-%E5%9C%8B%E5%AE%89%E6%B3%95-%E7%AD%89%E6%94%BF%E6%B2%BB%E7%88%AD%E8%AD%B0%E5%8F%8D%E6%98%A0%E6%B8%AF%E8%99%95%E6%96%BC%E6%AF%80%E6%BB%85%E6%96%9C%E5%9D%A1%E4%B8%8A

香港ジャーナリスト協会(香港記者協会、以下「記協」)の議長 楊健興 Chris YEUNG Kin Wai氏は出演した香港電台HKRT(香港ラジオテレビジョン)の英語チャンネル番組『香港への手紙』の中で、中央政府は『港区国家安全法』が香港の平和を回復させることができると期待しているが、ここ一週間の内に起こった政治的な事件は憂慮せざるを得ないものばかりで、同氏の見方では、香港は「死滅の一途をたどっている」と現状を形容する言葉を使った。中央政府が真剣に香港と内地を同様に扱おうとしているか否かについては、答えが「ノー」であるならば、具体的にどのようなことが出来るのかを考えなければならないと同時に、この問題は猶予をおかない回答が必須だ。

  楊氏が言及した内容では、また、過去一週間に香港で起こった事件で、政府が終日飲食店での店内飲食を全面禁止する制限令を敷いたのが一度あり、持ち帰りしか出来ない食品を抱えて食べる場所を探してうろたえる市民の画像を放送内で示して制限令は既に撤回されたものの、今回の施策は、市民生活の実情を知らないかのような、支持率のきわめて低いキャリー・ラム率いる香港政府への印象を更に損なうものとなった。

土木建設の現場労働者は、飲食店内での飲食が禁止されて、屋外で地面に座って弁当を食べる姿があちこちで見られた。同様の情景は、日刊紙各誌でも相当数掲載されていた。土木建設労働者だけでなくオフィス勤務の市民も公立の街頭休憩所や陸橋の階段部に座り、「ランチ難民」さながらの様相を呈した。

同氏が言及したこととして、香港大学校務委員会が7月28日に戴耀廷Benny TAI Yiu-ting教授を同校の法律学部副教授から即時解雇する案を可決したこと、元香港独立提唱組織の「學生動源」Student Localism [7月1日付けで香港本部を閉鎖、活動は海外で行うと発表されている] のメンバー4名が『港区国家安全法』内の国家分裂罪容疑で逮捕、また、次期立法議会議員更新の選挙に立候補した12名が選挙参加の候補資格なしの裁定を受けた。

同氏はこうした動きから疑念を抱いており、この背後には中聯辧(中央政府が香港・マカオに設けている中央直属の「連絡事務所」)の圧力が明らかであり、特に戴耀廷ベニー・タイ 教授は香港独立論を掲げて、雨傘革命の際にも「セントラル占拠」にも関わっていた人物であり、中国大陸で過去に文化大革命の際に自由思想を抱く知識人が政治的にパージを受けた時と極めて類似した事例であり、一般市民の間でも今後大学の学術的な面での自由や自主権が更に蝕まれるのではないかと憂慮がある。

さらに同氏が触れた点として、16歳から21歳という青少年が4名逮捕された事例から、政府が今や『港区国家安全法』の元に正々堂々と民主化要求をする市民を身柄拘束する態度に出ており、警察でも「国家セキュリティー部」を設けて容赦なく国家分裂の容疑がかけられた人々を扱うことになるだろうとしている。

戴耀廷 Benny TAI Yiu-ting ベニー・タイ(Wikipedia画像より)

楊氏は、一部西側諸国は既に香港との間での逃亡容疑者引渡協議を停止しており、アメリカも香港の優待貿易の待遇を止めると公表しており、こうしたことは西側諸国が「一国家二制度」が既に終わったと判断したことを反映している。「香港の過去に有していた優勢な点は、自由や国際世界との密接な連携も含めて、もう破壊されてしまった」と同氏は自身の考えを述べている。