【香港経済を追え vol.23】

米中貿易戦争は、香港の『港区国家安全法』施行により、香港経済を巻き込む金融戦争に移行しつつあります。

これまで、社会主義の中国大陸に対して、香港は最恵国並みの優遇措置を適用されて来ました。アメリカの制裁によって中国製品が香港経由で再輸出される場合も、「原産地:中国PRC」と記載しなくてはならないことになると、再輸出(仕分けや最梱包などの再加工を含む)で利潤を得ている香港経済を鈍化させるだけでなく、香港企業のブランドで商品そのものを生産している中国大陸の企業の製品受注量にも、影響を与えないでは済ませられません。

そして、『港区国家安全法』が香港に住むジャーナリストとメディアをどんな形で「自主規制・自粛」に追い込んでいるのかをコラムを通して、貿易の自由と、メディアの自由、この2つを『立場新聞』The Stand Newsから見てみたいと思います。

■その一:中国への経済制裁の道具に使われる香港

アメリカ税関:香港ブランド商品のアメリカ向け輸出は「中国製造」の表記のみに。45日の過渡期を設ける。ニュースソース『立場新聞』2020/8/11 — 14:39

https://www.thestandnews.com/international/%E7%BE%8E%E5%9C%8B%E6%B5%B7%E9%97%9C-%E6%B8%AF%E7%94%A2%E8%B2%A8%E9%80%B2%E5%8F%A3%E7%BE%8E%E5%9C%8B%E5%8F%AA%E8%83%BD%E6%A8%99%E7%82%BA%E4%BE%86%E8%87%AA-%E4%B8%AD%E5%9C%8B-%E6%9C%89-45-%E6%97%A5%E9%81%8E%E6%B8%A1%E6%9C%9F/

アメリカ合衆国税関・国境警備局(U.S. Customs and Border Protection)は8月10日月曜日、連邦官報サイトに通告をアップロードし、香港からアメリカに輸入する物品の原産地の表示を来月25日から「香港」ではなく「中国」としなければならないとした。

通告によれば、この政策は先月29日から適用が始まっているが、通告は8月11日水曜日になって正式発表された。またアメリカ側はこの政策が発効するまでの45日間に香港製造の輸入貨物の表示は「香港」とすることができるが、そのような貨物が過渡期に倉庫から出る場合は、『関税法』第304条に基づいてその原産地表示を「中国」としなければならない。

この政策は先月14日に、トランプ大統領が署名した香港正常化の行政命令に関して設けられたもので、これは香港の特別待遇の扱いを停止し、アメリカ・香港の協同や交流関係を停止し、また逃亡犯移送のプロトコルを暫時停止する内容となっている。

通告は税関国境警備局の貿易事務所の行政副長官ブレンダ・B・スミスが署名して、正式に文書発表された。

香港工業貿易署のデータによると、アメリカは香港の輸出先として2番目に大きなマーケットであり、2018年の対米輸出額は460億米ドル(およそ3,565億香港ドル)で、輸出総額の9%を占めていた。

エコノミスト:輸出業界への影響は大きくないが、ラベリングの印象は強い

経済学者である關焯照Andy Cheuk-Chiu KWANは、「立場新聞」の問い合わせに対して、「今回の米国の措置が輸出業界に大きな影響は与えないとするものの、ラベリングの印象は強い」と指摘している。米国が香港を中国の一都市に過ぎないと看做して、特別区扱いしないということであり、率直に言えば、「向こうがまったく香港を香港として扱わないのなら、どうして中国の単なる一都市を国際金融センターとして扱えるでしょうか」と疑問を呈している。

同氏は、「アメリカが香港産の商品の原産地表示を【中国】とするよう求めるということは、香港がもはや最恵国扱いの貿易手続き・輸入関税を全て中国並みに変えるということであり、中国内地の都市として各種の貿易上・金融上の制限を受けることになる。米中貿易摩擦がこのまま続いて、香港が国際金融センターの機能を維持できなくなるなら、一番懸念されるのは米ドルとの為替ペッグ制(米ドル1:香港ドル7.8)だ」と同氏は言う。同氏は「米国企業が2、3年以内に香港から撤退する可能性もあり、アメリカが為替ペッグ制を取り消せば、香港との米ドル貿易を停止することになるだろう」としている。

「米ドルを使わないならば、ユーロとリンクする」こともあると同氏は言う。そうでなければアメリカに「勝手自由に踏みつけ」られて、「受身」の立場では香港は何も出来なくなってしまう。

鍾國斌:米国向け輸出を続けるため香港政府は法令を改正すべき

香港自由党党首であり、紡織衣料製造業部門の立法議員の鍾國斌Felix Chung Kwok-panが述べるところでは、「現状香港の法令によると全ての輸出貨物は産地証明書を添付し、『香港製造』と表記している。もし急に『中国製造』と改めるなら違法貨物積替えの罪を犯すことになり、政府は法令を改正して、香港の物品が引き続き米国向けに輸出できるようにするべきだ」と同氏は言う。

また、『香港製造』は品質がよいという感じを与えてきたので、今後更に多くの工場が大陸内地へ移動したり、別の市場を開拓してアメリカ向け輸出をしないとも考えられる。同氏は「紡織衣料製造業についていえば、影響は大きくはなく、業界のアメリカ向けの輸出額も大きくなく、また大部分は既に生産ラインを東南アジアに移している」としている。

黃定光:声は大きいが力は弱い 輸出入業界への影響は大きくない

立法議会の輸出入業部門の議員で、民建聯(民主建港協進連盟:親中派政党)黃定光Wong Ting-kwongは、今回のアメリカの動きを「当たりは強いが威力は低い」と評して、「輸出入業界への影響は大きくないが、心理的な影響を及ぼすだろう」としており、中央政府と香港政府は対抗措置を打ち出すだろうとしている。「業界内で、最恵待遇で別個の関税を適用してアメリカ向け輸出をしている輸出業者の割合は3%未満であり、多くの企業は中国大陸か東南アジアに工場を設けているので、原産地が香港ではなく、業界が大きな損失を被ることにはまずならないだろう」と語っている。

(その一 終わり)