【香港ローカル ニュース Vol. 51】

『返還当時』政府は「政府のシステムは三権分立を原則として建てられている」と言っていた

三権分立は、日本人にとっては日本社会の在り方として義務教育で教えられており、実際に日本という国はそのように運営されていると皆さんは思っていることでしょう。
今月の初めに、「香港政府は香港に三権分立はない」と言い始めたことから論議を呼んでいます。特に教育界では、1997年の香港の主権返還のセレモニーで頒布された文献には、当時の初代香港行政特区の行政長官であった董建華 Tung Chee Hwa 氏の名前で発行され、返還後の香港では三権分立(行政・司法・立法)と政府の主導的立場が行われると記載されていました。それを覆すような発言を三代目の行政長官キャリー・ラムと政府高官が今回するようになったことで、行動が中央政府服従であるだけでなく、いよいよ政府の強権が言葉として明言されるようになったのではないかと心配する声が上がっています。

以下、ケーブルテレビ局の『NOWニュースステーション』の報道です。

ニュースソース:

2020年9月5日 11:14‎‎【Now新聞台】

https://news.now.com/home/local/player?newsId=404417

香港に三権分立はないということがまた社会の論議を呼ぶことになった。1997年の主権返還当時、政府が国内外の記者に配布した資料によれば、香港の政治体制は「三権分立」の原則に則り建てられているとあった。ある学者の示すところでは、教育の現場では様々な文献を参照しており、政府の見解だけに基づくのではないとしている。

行政長官キャリー・ラムは、「香港に三権分立はない。したがって教育局局長の発言を全面的に私は支持します」と述べた。ここしばらく、行政長官も政府閣僚も何度か香港には三権分立はないと発言することが何度かあった。

1997年6月に政府により印刷・発行され、返還式典の際に国内外の記者に配布された香港のバックグラウンド紹介のパンフレットがある。そこでは「政府の体制」という章で、香港の政治制度は「三権分立」に基づき建てられるものであり、行政主導の政府があると記されている。

「三権分立」とは、行政・立法・司法機関がおのおの独立して機能運営されることを指す。

主権返還後、教科書には関連する表現が現れているが、例えば2013年発行の中学校の経済・公共事務の教科書では、香港は「権力の分立」Separation of Powers つまり、行政・立法・司法がそれぞれバランスした形になっていると記載している。

伍倫貢學院University of Wollonggong College Hong Kong(旧称:香港城市大学 Community College of City University )社會科學院Faculty of Social Scienceの講師黃志偉WONG, Paul Chi-wai(社会学学士)は言う:「何に基づいて、急に香港には三権分立はないと言いだしたのかが問題であって、そもそもが奇妙な発言。当然のこととして『事実を踏まえ、根拠を論じる』ようにすることが必要であり、その上で新たな言説が成り立つのかどうかを見定めなくてはならない。軽率に発言すべきではない。現在の執政当局の言説のみが基準だとするなら、それは教育上また学術的な意味で、大いに慎重さが求められるところであり、むしろ行政長官個人の意向に従った結果の言説に他ならない」。

同氏は、高等教育機関で香港政治と政治学を教える教授。同氏によれば、授業の際には、政府の見解だけに頼るのではなく、歴史的文献や客観的事実も参考にするとしている。