【香港ローカル ニュース Vol. 53】

香港での廃棄紙材を「国内廃棄物」扱いにすることで中国本土での輸入枠から外す方向へ

廃棄物の処理は、物によっては国内で行うのでなく、紙や廃タイヤやいろいろなものが第三国へ受け渡されているのは、日本も香港も同じです。特に、廃棄物の処理場を建設することが非常に難しい香港では、紙材の廃棄を本土に「輸入」してもらうことがありますが、輸入品とするからには貿易取引の枠に従うことになります。中華人民共和国の一部であるのだから、廃棄材の処理について香港を「国内」扱いにすることで廃棄のコストを下げようと、香港の紙材廃棄業者から声が上がっています。
産業廃棄物の処理は頭の痛い問題ですが、中国本土と香港のボーダーがなし崩しに曖昧になっていくのは、香港が本土と一体化する既成事実を増やすことであるので、単に産業上の問題なのか、あるいは政治的な意味合いでこうした「解決策」を推し進める勢力があるのか、関心の集まるところです。

以下、日刊紙『東方日報』の報道です。

【ニュースソース】 東方日報 Oriental Daily, 2020年9月28日週一 上午5:45 [GMT+8]‎

https://hk.mobi.yahoo.com/news/%E7%88%AD%E5%8F%96-%E6%B8%AF%E5%BB%A2%E7%B4%99-%E5%88%97-%E5%9C%8B%E5%BB%A2-%E5%85%8D%E9%99%A4%E9%80%B2%E5%8F%A3%E5%85%A7%E5%9C%B0%E9%99%90%E5%88%B6-214500525.html?guccounter=2

【東方日報記者より】香港の廃棄紙材の輸出先は主に中国本土であるが、本土では廃棄紙材の輸入枠と許可申請という制限が掛かっているため、香港ローカルの廃棄紙材の回収業者と紙販売業者の両方から香港政府を通じて中央政府に働きかけて、香港の廃棄紙材を「大湾区」(Greater Bay Area, 珠海デルタ一帯の、香港・マカオ・深圳・広州市・深圳・珠海・佛山・東莞・中山・江門・惠州・肇慶などの沿海都市とその隣接都市を統合した産業エリア)の自由貿易区で受け入れてもらって処理をすることで、輸入枠の制限の免除を受け、廃棄紙材の輸出問題を長期的に解決しようという動きがある。本土側に工場を設け廃棄紙材の処理をしている香港法人の日高環保資源管理有限公司(Eco Rich Company Limited, 2017年設立登記の非上場企業)業務部長の梁一陽氏はこの件について、「本土側が香港の廃棄紙材を『国内廃棄物』扱いにしてくれるならば、国内側の輸入許可申請の制限を受けることなく、廃棄紙材の問題は今後も順調に解決出来るので、香港政府が業界とよく意思疎通を図り、業界の経験をくみ取った上で、場合によっては業界とジョイントべンチャーの形で香港に紙パルプ工場を設立して廃棄紙材の処理問題をしてもらえれば、既存の業者を淘汰するのでなく業界の業態転換を後押しすることが出来るので、そのような方向に進むことを望んでいる」と述べている。

香港の紙材問題は膨大な挑戦に直面しており、香港の近隣国家、インドネシアやマレーシアなどが続々と各種廃棄紙材の輸入統制を引き締めている一方で、大陸本土も廃棄紙材輸入の原産地に規制を掛け始めており、香港の廃棄紙材の回収・輸出・リサイクルの問題は早急の解決策が求められている。

エコロジー廃棄物リサイクル協会会長の劉耀成氏も同様の指摘をしており、「香港政府から中央政府に対して香港の廃棄紙材の輸入制限撤廃を数年来働きかけているが、一向に結果が出ていないため、香港の廃棄紙材は本土に輸入してもらうことが出来ず東南アジア諸国へ向かわざるを得ず、そうなると他の国と廃棄紙材の安値競争になるやもしれず、もし受け入れ国の紙価格が低すぎれば、香港政府に補助金を増やすことも再検討してほしい」としている。

政府の介入で直接補助金給付を望む

社会全体のエコロジー問題を扱う香港の慈善団体である綠惜地球(The Green Earth)で環境提唱業務部長を務める朱漢強(Hahn CHU Hon Keung)氏の認識によると、「政府は、廃材の第三国への輸出、香港内に処理工場を設けること、中央政府側で紙材を収集してもらうことを含む三大措置の方向で廃材処理を進めるべきだ」としている。廃棄紙材がただ埋立地行きになるのを避けるべく、政府が介入して廃棄紙材に直接補填給付金を出すことは避けられない状況であり、廃棄紙材の回収価格を安定させるだけにとどまらず、香港地場の回収業者と紙材販売業者が廃紙の輸出という形の処理で、競争力を持たせることにもなるという。

政府部門である環境保護署Environmental Protection Departmentの回答によると、本土の環境省とその関連部門委員会とは意見交換を重ねており、国家として香港ローカルの回収市場の状況を取り込んでもらい、香港が大湾区で廃棄物回収の面でどのようなチャンスを得られるかの検討を続けているとのことである。

朱漢強氏は政府が廃棄紙材の回収に補填金を出すのは不可避なことだとしている。