【香港ローカル ニュース Vol. 54】

香港の住宅事情の一片:地下鉄延長に伴う郊外住宅地と住宅物件不動産の開発

香港の民間デベロッパーは高級路線のマンション開発をするばかりの一方で、香港の不動産価格を調整する役目を負う政府の住宅公団は、賃貸の公団アパートや、販売する公団マンションなどを作ってはいますが、増え続ける人口と、開発地不足、上昇しない給与など、家賃の安い・分譲価格の安い公団の住宅は、依然倍率も高く、若年層・低所得者のための住宅が圧倒的に不足しています。もし抽選に当たらなければ、高い家賃を払って狭い民間の賃貸物件に住み続けることになります。

地下鉄の運営会社が民間デベロッパーとJVで開発するマンションは、通常地下鉄駅の上物として建築されるため、交通の便もよく、人気があります。こうした開発が注目を集めるのは、ニューテリトリーズから香港島のアドミラルティ(コンベンションセンターの隣の地下鉄駅)に新しい地下鉄路線が計画されており、既に屯馬線第一期の工事で旧香港空港であった「啟德 Kai Tak」までが開通、海沿いの町「紅磡 Hung Hom」からビクトリアハーバーを渡る新しい4つ目のトンネルも建設が進んでいて、新規の大規模マンション群が出現しているからです。

乗換駅の利便性が良いということは、通勤時間が遠い郊外の住宅であっても香港の中心部まで通勤するのに便利だということを意味します。香港に隣接する中国本土側の深圳[Shenzhenしんせん]から、香港島のセントラルまでまっすぐ南下する形で縦断すれば、一時間未満でアクセスできることになります。現在でも香港の北端に位置する粉嶺[Fan Lingファンレン]や上水[Sheung Shui ションソイ]などの郊外住宅地から香港島へは、通勤地まで直通のバスで行き来する人が多くいます。地下鉄でも通勤は可能ですが、途中の乗り換えが現在は4、5回必要になります。

郊外の地下鉄駅が上屋部分にショッピングモールと高層アパートを載せた形で開発されるため、全く何もない山間部を切り開いて開発が計画されて、地下鉄の駅の建設と同時に町作りと大量の(アパートの収容量に見合った)人口移動が起こります。そして公設の行政サービスや学校などが整っていくのですが、香港島のほうでも、東の「太古城タイクーシン」駅や、比較的最近の西の「堅尼地城ケネディタウン」駅などで同様な開発が行われて、駅周辺だけが高層化されています。

図の茶色部分は今年開通しました。現在工事中なのは、最後の青い部分です。
地下鉄路線図(2020年10月現在、左上の軽便鉄道は地下鉄との乗換駅以外が省略されていますが、こちらも郊外の住宅団地が多数あります。)

柏傲莊The Pavilia Farm ザ・パヴィリア・ファーム(*注1)が発売開始、倍率38倍を超える購入申し込みが殺到。400人を超える行列ができ、モデルルーム参観で8時間待ち。参観をせずに、直接購入申込順番待ちの番号札を手にした市民は「いちかばちか賭けてみます」とコメント。

ニュースソース:Apple Daily更新時間 (HKT): 2020.10.11 23:06‎

https://hk.appledaily.com/finance/20201012/SOTQ2SWDGVE7JN6ILNMYA2TXGE/

注1:柏傲莊[paak6-ngou6-jong1]The Pavilia Farm は、香港の九龍半島側、北よりの地域、新界(ニューテリトリーズ)の公共交通の乗り換え地である地下鉄の「大圍タイワイ」駅を覆う形で開発された公団マンション。

配布番号チケットの数量記録が更新された-というのはPS5(ソニープレイステーション5)の予約申し込みのためや公団住宅の抽選のために徹夜で行列した人数。今回記録更新となったのは、注目の集まっている「大圍タイワイ」駅に出来る新しい公団マンション(*注2)「柏傲莊ザ・パヴィリア・ファーム」の抽選。過去二日間に長い行列が出来ていたが、10月11日日曜日は、モデルルーム・分譲受付の設置された荃灣愉景新城[Tsuen Wan ちぃゅん・わん D・PARK(ショッピングモール)]には購入申請チケットをもらう列とモデルルーム参観の列を分けてもなお、モデルルーム参観だけで400メートルの行列が出来た。マーケットの消息筋によると、夜9時までに、物件の分譲申請数は7000を記録したとのことで、第一期分譲の180戸に対して、枠を大幅に超える38倍の申し込みがあったことになる。
*注2: 香港では建設が完了する前に、モデルルームをデヴェロッパーがホテルやショッピングモールなどに用意して、マンションの分譲発売をする。物件が数棟に渡る大型住宅ビルの複合体になる場合は、既に建設完了した棟に分譲申込みの事務所とモデルルームが設けられる場合がある。民間のデヴェロッパーの場合はデヴェロッパー自体が不動産大会社であるので、売出物件が更に中小企業の不動産業者・個人の仲介業者に小分けされることもある。住宅公団(香港での呼称は、房屋署)の既存物件の場合は、入居・購入に資格制限(年齢や収入の上限など)があるので、空きがあるかをまずネットで確認してから書類送付で申し込み、抽選を待つことになる。
公団住宅には、公共屋邨(公屋)Public Rental Housing(収入の上限などの入居に条件のある賃貸専用住宅物件), 居屋House Ownership Scheme Flats(現在入居している住宅物件の購入)がある。20階くらいから40数階まで、さまざまだが大体が高層住宅ビルの複合体。ひとつの住宅ビル複合体[屋村Public Estate]は~苑、~邨などの名前が付けられているが、建設時期・場所によって、中庭を囲む十字型だったり、V型やW型、T字型や、交通量の多い道路に面する側を廊下だけにした壁のような形だったり、各様の設計のバラエティがある。

参考:(住宅ビルの外観画像を見ることができます)
https://zh.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%99%E6%B8%AF%E5%85%AC%E5%85%B1%E5%B1%8B%E9%82%A8

長い行列の位置表示のパネルは、モデルルーム参観の予測時間は8時間待ちとなっているが、現場はそれでもごった返している。
ニューワールドディヴェロップメントの営業マーケティング部の統括部長黄浩賢氏は、柏傲莊[ザ・パヴィリア・ファーム]の分譲購入申し込みは午後三時までの時点で4千件を超える申し込みを記録したと述べている。

ニューワールドディヴェロップメント新世界發展(以下NWD)[香港証券取引所企業コード017、今回物件の売主指定委託者“玨基有限公司Lucrative Venture Limited”の持ち株会社]が去る金曜日に公表したザ・パヴィリア・ファーム(以下TPF)の定価は、第一期で平方インチ当たり1.8万香港ドル(約24.4万円)。これに続く週末のモデルルームの公開と一般分譲購入申込受付で、週末に数千人が分譲コーナーに殺到。日曜日の購入申込には人が詰め掛け、物件の発売初日で既に2000件の申込みがあり、抽選で物件のタイプを決められるようになるのは、公団マンションの抽選と変わらない様子となった。ある市民は、「いちかばちか、とにかく申し込んでみる」と言っていた。

廖さんは、700万から800万香港ドルの予算でワンルームタイプを買いたいとのことで、「(抽選に当たる確率は低いけれど)とにかく賭けてみます」と言っている。

TPFは地下鉄二つの路線(屯馬線[屯門から馬鞍山]と東鐵線[羅湖から紅磡])の乗り入れ場所であり、合計では3000戸を提供する規模となっており、今年注目を集めている新物件。モデルルーム公開となった先週末は、集合制限令解除前でもあり、人手を整理するためにデベロッパーが来場者をモデルルーム参観者と現地購入申込み者の二つに分けて、番号札を分けた。

日曜日ということで現地購入申込みに来た廖さんは、700万から800万香港ドルの予算でワンルームの物件を買いたいとのことで、この物件は交通の便がいいが、詰め掛けた人混みがあまりに多いのをみて、「とにかく賭けてみます」と言っていた。それで購入申込のほうの番号をもらい、モデルルーム参観はしないとのことだった。*注3

注3:今回のザ・パヴィリア・ファームの売主・所有者は、地下鉄の運営会社。3棟あり、ワンルームから4ルームの間取りの部物件があり、実用面積が278~1383平方インチとなっている。上記の平方インチ当たり1万8000香港ドル‎(日本円で約24万4000円)で計算すると、概略6700万円~3億4000万円の価格帯となる。‎

別の女性来場者の劉さんは現在香港島東区に居住で、やはり地下鉄駅の上屋建てで交通の便がいいのが一番のポイントで、予算約700万香港ドルでワンルームか2ルームの物件を望んでいるとのこと。現地は人が多すぎるのを見たので、またネット上でもモデルルームの画像を見ることが出来るので二度手間を省くつもりで、購入申込のほうに並んで、モデルルーム参観のほうには並ばないことにしたとのこと。

参考:大手不動産会社のCentaline中原地産のサイトにVRのモデルルーム360度画像があります:

https://hk.centanet.com/info/new-property/%E6%B2%99%E7%94%B0/%E6%9F%8F%E5%82%B2%E8%8E%8A/1764?gclid=CjwKCAjwiaX8BRBZEiwAQQxGxzdKDCraUb2pE6VAbSHFAC5j2YTyY2obXeNxTonUu_aqWVqblPsm2hoCR7EQAvD_BwE

TPFのモデルルームは(物件の実際の所在地ではなく)荃灣愉景新城 Tsuen Wan D-Parkショッピンモールの吹き抜け部に設けられており、土曜日に続いて日曜日も300人以上の行列となった。日曜日は不動産仲介業者も現れ、現地は相当な人混みとなり、行列末尾の位置表示のパネルもモデルルーム参観で8時間待ちとなっており、かなりの賑わいを見せていた。

モデルルームの様子

最近の新規不動産物件の動向

プロジェクト 動向 デヴェロッパー
タイワイ The Pavilia Farm 二日で180戸に7000枚の購入申込小切手を受け取る。今週中に追加の受付をするかどうかを公表する予定。 新世界 New World Development
将軍澳 Malibu 再度追加で6戸発売、売却済 會德豐 Wheelock & Co.
将軍澳  Sea to Sky 先週土曜日に285戸発売、二日間で約60戸が売却済み 長江實業 [李嘉誠グループ]
油塘 蔚藍東岸
Montego Bay
中国本土で住宅用不動産開発している五礦地產は香港で株式上場している会社で、香港では初のプロジェクト。688戸を2023年に完成予定で、今年年内には予約発売開始予定。 五礦地產Minemetal Land
[中国本土資本の不動産会社]