【香港経済を追え! vol.47】

今回ご紹介するのは、景気刺激策として香港市民への合計5,000香港ドルの助成金『消費券』Consumption Voucherが電子媒体で支給が始まり、今年も9月末で第三4半期が終わることから、香港の行政長官から経済見通しが発表されたことです。ちなみに、香港では空路にて外から入ってくる者には政府指定のホテルでの21日間の強制隔離期間が続いていますが、大陸からの一部の入境者には例外措置が取られています。従って、大陸からの旅行客を相手にした商売はなかなかコロナ禍からの回復が難しい状況です。一時期は、香港の至るところに薬局が新設され、大陸からの旅行客相手に粉ミルクを売る様子が見られましたが、薬局ブームが去って、今度はマスクの専門店があちらこちらに見られます。
中国国内と経済特区の香港とマカオとの間で資金移動をよりスムーズに行う工夫がいろいろ提案されていますが、今後中国へ進出しようとする外資企業が減っていく傾向の中で、たとえば「大連市から東芝が撤退する」というニュースに触れて思うのは、中国経済がどのように現金を流入させようとしているのか、その行方を検証するのが、今後の香港・マカオの利用価値を占うことにもなるのではないでしょうか。


▼香港財務長官:コロナ収束すれば通年経済成長率は5.5%から6.5%まで回復可能との見通し

〜NOWニュースチャンネル 2021年9月12日 11:25から〜

財政長官 陳茂波は所信を述べ、「消費クーポン〔一人5,000香港ドル〕の経済刺激効果が予想より0.7%高かったこと、また新型コロナが収束させられれば、通年経済成長率が5.5%~6.5%になる可能性が高い」としている。さらに「『南向通』によって人民元で香港上場株を購入するシステム作りを前向きに検討する」と述べた。

8月に一期目の消費クーポン〔2,000香港ドル〕を香港政府が出したことで、財政長官陳茂波は商業活動に改善があったと見ており、同時に電子マネーを推進することにもなり、経済刺激効果は予想より高く、通年経済成長に寄与していると評価している。

財政長官:「消費は雰囲気作りが鍵ですから、便利さや楽しさを感じれば、多くを消費しようとします。経済刺激効果は当初予測より0.7%高くなると見られ、先に公表した今年通年の数値、元の経済成長予測では3.5%~5.5%としていましたが、政府は8月に上向きに5.5%~6.5%に変更し、現状から見ると新型コロナが収束させられればこの目標値実現はむずかしくないと判断しています」。

消費クーポンを書類申請した市民の中には、9月1日に一回目のクーポンを予定通りに受け取れない者がいたという事を受け、財政長官は手配上の不備があったことを認め、既に手続事務所を増設しているので、水曜日までに申請書を提出するよう勧めている。

一方、クロスボーダー資産運用システム「南向通」[注1]の始動に関連して、前海経済特区[注2]が再度エリア拡大したことについて、財政長官は「良い知らせだ」とした上で、「人民元の国際化を助けることは前海との協同のポイントだと思っており、行政諮問委員会のメンバーである任志剛が、株式市場が人民元での株価表示と取引を提案していることについては、原則上は可能であるが、運用上の問題は研究の余地がある」と述べた。

[注1]『南向通』正式名称「粵港澳跨境理財通」はクロスボーダーで個人投資家の資金移動を可能にするシステムで、大陸側、香港、マカオそれぞれの金融管理当局が共同して運営するもので正式稼動は9月24日から。大陸の投資家が香港・マカオへの資金移動を「南向通」と呼び、その逆を「北向通」と呼ぶ。

[注2] 前海経済特区、正式名称「前海深港現代服務業合作區」は、香港行政特区に隣接した大陸側の都市、深圳経済特区と同様の趣旨で深圳の西に新設されたもので、深圳が工業やIT産業で成長したのと対照的に、サービス業(服務業)を中心として現金資産を流通させる金融ハブに育てたいとの中国政府の方針によって粵港澳大灣區(広東省・香港・マカオグレーターベイエリア)構想の中で経済発展重点箇所となっている。深圳国際空港の隣であり、海を隔ててマカオの向かいに位置する。サービス業に注目しているとはいえ、物流については保税区扱いであり、大陸側はモノとカネの流通拠点としたい意向がある。


英文サイト:

http://www.szqh.com.cn/How/Our_Services/index.html

9月24日から始動するシステム開通セレモニーが10日に行われたことを伝える内地のニュース

行政長官によると、「『南向通』の規模は以前に比べ非常に大きく、また通用貨幣は人民元であり、南向通が株式を受け付けるとなると、このようなことが可能なのかどうか検討する必要があるのではないか。また同じ銘柄株を人民で価格表示し、香港ドルでも表示するなら、仲介時に鞘抜き(為替差を利用したマージン利益)が発生する恐れもあり、二つの資金プールを設けることになるため、運用ステージごとに考慮すべきことが少なくありません」。

さらに行政長官の指摘では、「経済の復興はばらつきがあり、飲食業・小売業に集中していて、新型コロナの対策の旅行業への影響はまだ大きく、政府も大陸内地とのボーダー再開に向けて精一杯の努力をするので、香港経済へ最大のサポートをする結果になるだろう」と述べている。

前海は深圳の西に位置し、向かいに珠海市とマカオがある。マカオは縮尺の関係で見えないが、「珠海市」の「市」の下の位置に埋もれている。(Google Mapより)


ニュースソース(NOWニュースチャンネルのネットニュース):

https://news.now.com/home/local/player?newsId=449532