トランプ新政権後の香港経済の行方

就任前の1月17日、トランプ米大統領はインタビューで、中国の習近平国家主席との最近の電話会談は友好的なものだったとし、中国との貿易協定が成立すると信じていると述べました。
また、米国が中国と公正な貿易慣行について合意に達することができるかとの質問に対し、トランプ大統領は可能だと答え、中国に対して「関税を使うのは望ましくない」が、関税は中国に対処するための強力な「武器」であるとも言及。
中国からの輸入関税10%発動か
しかし就任後の21日、中国からの輸入品に対して2月1日から10%の関税発動を検討していると明らかにしたことを受け、中国・香港株式市場・前場は一気に下落しました。
イーロン・マスクが鍵となる
昨年、香港大学の陳志武教授は「香港経済は、トランプ政権による中国製品への関税引き上げ、技術移転や先端分野での厳しい措置の導入により、ダメージを受けることは避けられない。他方で、トランプ氏の支持者の1人のイーロン・マスク氏は中国とのビジネス上の関係が強く、当該措置の抑制力となる可能性がある」との見解を示し(「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙11月7日)、
中国国務院香港・マカオ事務弁公室が設立した公的シンクタンクの全国香港マカオ研究会の劉兆佳研究員は「香港に対する敵対的な姿勢が強まる」と指摘し、「先端分野に対する輸出管理の強化が進み、香港のイノベーションや技術発展の機会が抑えられ、個人に対する米国の制裁が強化されるだろう」と警戒感を強めています。
香港の金融センターとしての立ち位置はゆるがない
一方で、「米国は香港に対して貿易黒字を計上しており、香港が懲罰的な措置が取られることはないだろう。米ドル覇権の維持に貢献している香港の金融センターとしての機能をまひさせることもない」との見方を示しています(同紙11月7日)。
また、香港エコノミストの李兆波氏は地元紙の取材に対し、今後の香港経済の見通しを語った中で「2025年のトランプ氏の米国大統領就任後、(次期政権の)経済政策や対中政策を見る必要がある。2025年半ばにならないと、今後の香港経済の先行きを見通すことは難しい」とコメントしました(「明報」11月11日)。