2025:文化の交差点が広がる都市の顔

香港ブックフェアは毎年恒例のイベントで、今年35回目の開催は明日7月16日から。従来の「本の展示会」の枠を超え、都市・音楽・食・宇宙・文学など多分野のゲストを迎えた文化フォーラムのような広がりを見せる予定です。ゲストスピーカーには、評論家・作家の李純恩、食文化研究者の蕭欣浩など香港の現在を形づくるパーソナリティー、また海外からもスペースXの宇宙飛行士となった作家・画家・詩人でもあるショーン・プロクター博士や、料理研究家でアジアのレシピを英語で出版したAnnabel Jackson、日本からは芥川賞受賞作家の九段理恵などが並び、来場者を楽しませそうです。
日本人目線で
日本人視点で見ると、こうしたゲストからは日本文化との接点がそこここにあり、たとえば、李純恩氏は自身のエッセイで日本の温泉地や郷土料理への親しみを語っており、香港から見た「日本の原風景」を柔らかな筆致で伝える作家。香港バプテスト大学で中国語学中国文学の講師を務める蕭欣浩博士の食文化研究は、屋台文化や庶民の味に焦点を当てており、「懐かしい家庭の味」との共通点も感じさせます。
イベント全体を通して見えるのは、「読書」を入り口に香港という都市が持つ多様性や文化的交差点の機能。国際都市としての顔・地元文化へのこだわりーーその両方がブックフェアという催しの中で違和感なく共存しているように配置しているところに主催である香港貿易発展局HKTDCの絶妙のキャスティングを見る思いです。