香港IPO市場が世界1位の見通しに——2025年、再び戻ってきた「資本市場の熱気」

最新のレポートによると、今年の香港IPO市場が世界第1位の規模に回復する見通しだと示されています。
ここ数年、香港市場は世界情勢や金利環境、地政学リスクの影響を受けて低迷していました。
「香港の勢いは戻らないのでは」と悲観する声もあった中で、今回の回復傾向は、金融業界だけでなく香港で暮らす人々にとっても朗報と言えます。
■ IPO件数は前年比43%増、調達額は3倍以上の2800億HKDへ
EYのレポートによれば、2025年の香港市場では:
- 新規上場数:100社超(前年比+43%)
- 資金調達額:2800億香港ドル(前年比+218%)
という予測が示されています。
特に調達額の回復は大幅で、ここ数年の低迷ぶりを考えると“劇的な回復”といってよい規模です。
香港市場は元々、世界トップクラスのIPO市場として長年の実績があり、テックから金融、不動産、消費、物流まで幅広い企業が上場してきました。
しかし近年は米国市場や中東市場に大型上場が流れるケースも増え、香港の存在感が薄れつつあるという指摘もありました。
今回の予測は、その流れが反転しつつある兆しだと評価できます。
■ なぜ香港のIPO市場が回復するのか?
1|政策最適化で“上場しやすい香港”への再構築
ここ数年、香港取引所(HKEX)は上場基準の見直しや規制緩和を続けてきました。
- 海外上場企業の香港回帰の促進
- 新産業向けの上場制度
- セカンダリーレスティングの柔軟化
といった改革が進んだことで、企業が「香港で上場しやすい」環境が整いつつあります。
香港政府も国際金融都市としての地位維持を強調しており、制度面の追い風がIPO市場回復の大きな要因になっています。
2|国際資本が“香港を選び直す”動き
世界的な金利高や地政学リスクによって、投資マネーは慎重になっています。
しかしその中でも、香港市場には依然として強みがあります。
- 国際投資家が参加しやすい成熟した取引インフラ
- 中国本土との資本連携(Stock Connectなど)
- アジア拠点としての地理的優位性
これらが評価され、国際資本が再び香港を主要な選択肢とする動きが見え始めています。
市場に「資金が戻る兆しがある」こと自体が、IPO活性化に直結しています。
3|上場企業の“多様化”で市場の厚みが増す
従来、香港のIPOはテック系企業が中心でしたが、2025年以降はより幅広い業界が上場準備を進めていると言われています。
- 新エネルギー
- ヘルスケア
- 物流・サプライチェーン
- 消費者ブランド
- ESG・クリーンテック
産業のバラエティが広がることで、香港市場はリスク分散が進み、投資家にとっても魅力的な市場へ。
さまざまな企業が参入することは、市場の安定化と長期的な成長につながる“土台づくり”でもあります。
■ 香港にとってIPO市場の回復は“景気の空気”を変えるきっかけに
金融は香港経済の柱。
だからこそ、IPO市場の動向は香港全体のムードにも影響を与えがちです。
ここ数年は、
- コロナ禍の影響
- 国際情勢による投資マネー流出
- 高金利での株価低迷
など、香港人の間でも「相場が重い」という空気が漂っていました。
そんな状況の中で、EYが示した“世界1位回復”という予測は、
単なる数字以上に、香港の経済の自信を取り戻すシグナルとして受け取られています。
金融街の中環(Central)でも、早くも「今年は上場ラッシュになるかも」という声がちらほら。
投資家だけでなく、香港に住む人たちにとっても、久しぶりにポジティブなニュースといえそうです。
■ 香港はこれからどうなっていく?
もちろん、国際市場には依然として不透明感も残っています。
それでも、今年の香港IPO市場に見られた回復の兆しは、香港が依然としてアジアの重要な金融拠点であることを改めて示す材料になりました。
2026年にかけて、この勢いが一過性のものなのか、それとも本格的な回復の始まりなのか──
来年の市場動向は、香港の金融界にとって大きな転機になりそうです。

