2025年の終わりに、あらためて見た香港

12月25日に「年末の香港はいま、どんな状態にあるのか」という記事を掲載しましたが、
年の終わりが近づくにつれ、この一年をもう一段引いた視点で振り返る必要性を感じるようになりました。
本記事では、2025年最後の投稿として、
この一年を通じて見えてきた現在の香港の姿を整理してみたいと思います。
静かな年末の裏側で進む動き
2025年の年末は、火災の影響により各地でイベントの中止や延期が続き、
例年に比べると控えめで、静かな空気が漂っています。
一方で、すべてが止まっているわけではありません。
安全確認や体制整備が整った分野から、 業務や活動が段階的に再開され、
街や経済は慎重に前へ進み続けています。
この「止めずに、調整しながら進める」という姿勢は、
今年の香港を象徴するキーワードの一つだったように感じます。
技術と資本が示す、長期的な方向性
年末にかけて公表された動きからは、 香港が引き続き長期的な成長を見据えていることが読み取れます。
北部都会区で進められている港深創新及科技園では、 第1期の最初の3棟が完成し、
すでに多くの企業・研究機関が入居しています。
異なる制度を持つ香港と深圳が隣接する地理的特性を活かし、
ライフサイエンス、AI、データサイエンスといった分野で
国際的なイノベーション拠点を目指す構想は、 短期的な景気に左右されない中長期の政策意図を感じさせます。
活力を保つ香港の資本市場
資本市場の面では、2025年の香港は数字の上でも存在感を示しました。
香港取引所では、今年106社が新規上場し、 IPOによる資金調達額は世界首位となりました。
バイオテクノロジーや先端技術分野の企業が多く上場している点は、
投資家の関心が引き続き成長分野に向いていることを示しています。
市場全体の取引量も増加しており、 外部環境の変化がある中でも、
香港の金融市場が一定の厚みと流動性を維持していることが分かります。
広がる圏域と、人の流れ
インフラ面では、 広州―湛江間高速鉄道の開通が象徴的な出来事でした。
粤港澳大湾区と周辺地域を結ぶ移動時間が短縮されることで、
人やモノ、ビジネスの往来は、 より広域かつ現実的なものになりつつあります。
香港単体ではなく、 広域経済圏の一部として機能する動きは、
今後も続いていくと考えられます。
社会的な出来事が突きつけた現実
一方で、2025年は社会に重い課題を突きつける出来事もありました。
大埔宏福苑で発生した火災では、 多くの尊い命が失われ、
現在も支援や再建に向けた取り組みが続いています。
また、司法や政治を巡る議論が、 国際社会との間で取り上げられる場面もありました。
こうした出来事は、 香港が複雑な環境の中で運営されている現実を改めて浮き彫りにしています。
実務の視点から見た2025年
会計・実務の現場から振り返ると、 2025年は「仕組み」よりも「運用」が問われた一年でした。
デジタル化が進む一方で、 情報の正確性、権限管理、確認プロセスの重要性は増しています。
想定外の出来事が起きた際に、 業務を止めるのか、 調整しながら継続するのか。
その判断を現実的に行う力が、 企業にも専門家にも求められた一年だったと言えるでしょう。
2025年の終わりに
2025年の香港は、 決して平坦な一年ではありませんでした。
それでも、制度、市場、インフラ、そして日々の実務は、
大きく揺らぐことなく積み重ねられてきました。
年末の静けさの中で見えてくるのは、 次の一年へ向けて足場を整える香港の姿です。
本年も当事務所のブログをご覧いただき、ありがとうございました。
2026年も引き続き、香港の現状と実務に役立つ情報をお届けしてまいります。

