国際企業が本社登記移転先に“香港”を選ぶ理由とは?

6月12日のブログにてご紹介した香港会社条例改訂の件です。外国企業が香港の会社登記所(Companies Registry)で本拠地を香港に移転申請することを可能にする条例改訂だとご紹介しました。5月23日の施行初日から反響がかなり大きかったとは聞いていましたが、初日だけで企業からの問い合わせが100件以上、関連資料のダウンロードは9,000回超だったそうです。

行政長官のスピーチに現れた“企業の動き”

7月1日の香港行政特区政府設立記念日の際、香港政府行政長官の李家超が当日のスピーチの中で2社が既に香港移転を表明したと言及しました。この2社とは:

  • AXA China Region Insurance Company(Bermuda) Limited
  • Manulife International Ltd.(宏利人壽保險)

という保険大手の2社[AXAについては添付の組織図をご参照ください]。どちらもバミューダ登記の国際的な保険会社ですが、アジア地区の事業統括・サービス強化を根幹に香港への本社機能移転を打ち出したものと思われます。Manulifeは移転予定を2025年11月としています。

企業が香港本拠を選んだ理由とは?

この選択には、やはり香港の制度・環境の強みが光っています。

🔹 法制度と税制の透明性
🔹 英語が通じるビジネス環境
🔹 国際会計基準との高い整合性
🔹 グローバル金融センターとしての実績

そして何より、登記移転を即決できる背景には、企業規模と判断のスピードもあります。

―AXAグループ全体では世界1億人以上の顧客を擁する巨大保険ネットワーク。
―Manulifeグループ全体の資産運用規模は1,400億米ドル超というスケール。

このような企業が自らのアジア戦略の拠点として「香港を選んだ」ことが、今の香港の競争力と期待値を物語っているように感じられます。

ソフトパワーとしての香港の存在感

かつては再輸出で栄えた時代もあった香港ですが、貨物取扱量では内地港湾に抜かれて、物流にも大きな変化がありました。いまや、「物流」以上に求められているのは“ソフトパワー”のハブ機能。法務・税務・資産運用・金融サービスといった専門性を活かしたアジア統括拠点としての立ち位置です。

AXAとManulifeのアジア拠点の移転発表は、まさにその象徴ともいえる出来事なのではないでしょうか。

香港の民生

行政長官のスピーチで取り上げられた他のトピック——GDP成長率や住宅供給数、青年の事業スタートアップ支援政策など、こうした “民生にどう関わるか”という部分は、今後ブログで香港発信ならでは視点で取り上げてみようと思います。

[以下の組織図はAXAのオフィシャルサイトから引用。矢印は当社]

https://www.axa.com/en/investor/organization-charts