香港で人工知能研究開発を促進

《河套深港 科技創新合作區深圳園區發展規劃》~科学技術開発を見据えた香港深圳を結ぶ国家プロジェクトのプラン掲載のイメージ画像

2025年7月14日、『香港人工知能研究開発所』(研発院)を発足させるための予算配分要求にあたり、立法議会情報科学技術・放送事務委員会において、革新科学技術および工業局局長の孫東氏が開会スピーチを行いました。

孫氏は1967年北京市生まれ。カナダ工学アカデミー、欧州科学人文アカデミー、国際医学生物工学アカデミー、電気電子工学会、米国機械学会などの会員であり、ロボット工学やナノ操作などを専門とし数々の受賞をしている人物。2022年から香港政府の要職である新科学技術および工業局局長に就任しており、広東語圏以外の出身者で政府高官となった最初の人物とされています。局長のポストに就く前は、香港城市大学生物医学工学科の教授兼学科長を務めていました。今回のスピーチは香港政府の公式サイトに掲載されていますが、英文版はありません。

今回の委員会は予算要求するにあたり研発院の設立目的・ガバナンス・インフラ整備などを説明するものでした。目標は今年度中に10億香港ドル(約190億円)を獲得するというもので、2026~2027年「財政予算案」の中で正式かつ具体的に発足させるとあります。

同日付で立法議会に提示された文書(英語・中国語のバイリンガル)を見ると、研発院が国家戦略の一部としての役割を当てられていることが明記されており、香港の地政学的な重要性だけでなく「官、産、学、研、投」つまり政府・産業・学術・研究・投資という五つの分野を統合するのに香港が適切な場であると考えられていることが伺えます。

物流のハブ・金融センターの香港の役割は歴年の実績がありますが、今後FinTech―金融サービスと科学技術のコンビネーションの方面でも率先的な力を発揮できるか、また、香港・マカオ・広東省に跨る大湾区Greater Bay Areaの継続発展の牽引力になれるか、そんな期待を担う新たな機関となりそうです。

今回の研発院設立7月14日のニュースに前後して、革新科学技術および工業局の公式サイトのニュースでは、孫氏が7月11日にグローバル大学イノベーションネットワーク発足にも登壇したこと、17日に香港のサイバーポートで催された『人工知能対データフォーラム』でスピーチをしたこと、大陸の広西省で催された『AI賦能千行百業超級聯賽~AIが力づける数百数千の業界スーパーリーグ』オープニングセレモニー香港分会場でもスピーチしたことが報じられています。AI 関連のフォーラムが挙行されるたびに、孫氏が活躍している様子が伺えます。(香港の「サイバーポート」は香港島南西に位置する商業施設・ホテル・教育・イベントなどを統合した大規模設備)