ゲートウェイとしての香港 大陸企業の資金調達先

トランプ氏が大統領になってから、アメリカファーストで米中間の関税障壁が問題になっていますが、大陸の企業は販売先の確保だけでなく、企業存続の体力を維持するには安定した資金調達が必須。
香港の証券取引所では、2025年今年上半期で新規の上場が53件あり、その内8件が大陸に登録本社を持つA株の企業です。

※上記表は、香港証券取引所のサイトから和訳引用:
https://www.hkex.com.hk/News/Market-Communications/2025/250731news?sc_lang=zh-HK
新規上場企業の内、大陸が本拠の8つの企業とは以下のとおりです:
企業名 | 業種 | 上場日 | 本社資本金額 (概算人民元建て) | 推定資金調達額 (HKドル) | 本社所在地 |
寧徳時代 | 電池メーカー | 2025年5月20日 | 約12.88億元 | 約356億~410億 | 福建省寧徳市 |
恒瑞医薬 | 医薬品大手 | 2025年5月23日 | 約44.23億元 | 約98.9億 | 江蘇省連雲港市 |
三花智控 | 自動車部品メーカ | 2025年6月23日 | 約42.09億元 | 約93.36億 | 浙江省紹興市 |
海天味業 | 調味料メーカー | 2025年6月19日 | 約27.87億元 | 約101.3億 | 広東省佛山市 |
藍思科技 | 電子部品メーカー | 2025年7月9日 | 約498.3億元 | 約47.7億 | 湖南省長沙市 |
新琪安 | 食品添加物 | 2025年6月10日 | 約9.62億元 | 約2.11億 | 江西省吉安市 |
容大科技 | 電子測定機器 | 2025年6月10日 | 約1.84億香港ドル | 約2.02億 | 福建省厦門市 |
METALIGHT | 精密光学部品 | 2025年6月10日 | 約117百万米ドル | 約2.42億 | 湖北省武漢市 |
本社所在地を見ると:
寧徳時代 福建省寧徳市
恒瑞医薬 江蘇省連雲港市
三花智控 浙江省紹興市
海天味業 広東省佛山市
藍思科技 湖南省長沙市
新琪安 江西省吉安市
容大科技 福建省厦門市
METALIGHT 湖北省武漢市
本社所在の省を地図の上で示すと次のようになります。

ここから、成長を続け資金を求めて香港で上場する企業にはどんな共通項があるのでしょうか。
一つには多くが沿岸部や水路輸送が可能な地域。湖北省は内陸ではありますが長江(揚子江)が貫いている省です。湖南省や江西省は広東省に接する位置関係から比較的早くから陸路の整備が行われてきました。かつて80年代~90年代にアパレルの工場が中国に建てられていたころ、土地の整備と同時並行で水道電気のインフラと陸路の整備が深圳や蛇口などを起点に進められ、鉄道輸送以外の陸路物流が整えられていきました。当時日本企業から現地工場に派遣されていた工場長や技術者の方ならばその急激な発展を目撃していたはずです。日系企業の工場棚卸の際は、香港の会計士が深圳からタクシーで工場現地まで、場合によっては道なき道を通ってやっと到着したものでした。
今や中国は高速鉄道の営業敷設距離も、世界全体の7割を超えたといいます。陸路の物流インフラ整備は人の移動でも物資の運搬でも経済を促進する要因の一つ。
上記の香港上場企業の業種を見ると中国の内需だけでも市場拡大が見込めるものであるのと同時に、そうした企業が資金を求めて香港に来るというのは、やはり香港が双方向のゲートウェイとして機能していること、これからもその役割は続くであろうことを示しているのであろうと思います。ゲートウェイ、ハブ、テストマーケットなど、香港が「アジアの国際都市」をうたう役割はまだまだ堅調だと言えるではないでしょうか。
香港上場が海外の企業にとってどれだけ重要であるのか、今年下半期の動きにも注目していきたいものです。