IPOのシステムの見直し プラットフォームとしての機能を柔軟化・安定化

IPO価格の最適化と公開市場規制に対して寄せられたコンサルテーション文書1,253を総括して若干の修正を加え、香港証券取引所(HKEX)はその大部分の提案を採用。そのうちクローバックメカニズムに関する部分は8月4日から発効しました。
今回、IPOの募集および価格設定メカニズムに関して変更された点は:
1.ビルドアップ・トランシェへの最低割当を従来の50%から40%に引き下げ。株式発行者は当初提案する株式の最低40%をビルドアップ・トランシェに割り当てることになります。言い換えると、発行条件の決定のために需要予測をするロードショウ段階で機関投資家に割り当てる株式割合が50%から40%に引き下げたということです。一般投資家への割合=公募配分比率が増えることを意味します。
2.IPO申請者はメカニズムAかメカニズムBのいずれかを選択。メカニズムAでは、クローバック率の上限が現行の50%から35%に引き下げられます。これは協議で推奨された20%よりも高い割合です。
クローバックとは、株式募集倍率が非常に高かった場合、機関投資家分に割り振られた割合を一般投資家向けに再配分するメカニズムです。
一方、メカニズムBでは、株式発行会社は、事前に一般公募に割り当てる部分の比率を定める必要があり、下限は発行株式数の10%(上限は60%)で、クローバックは適用されません。
3.また「Alternative threshold 代替参入条件」を提案。一般の上場企業やH株(中国大陸で登記している中国企業で香港証券取引所に上場している株式銘柄)発行企業に対しては、10億香港ドルの時価総額かつ10%の公衆(一般投資家)持株比率を維持することを求めるものです。A株(上海・深圳で株式上場している中国企業が人民元で発行する株)とH株(香港上場の株式)の両方を発行している企業については、「10億香港ドルの時価総額または5%の公衆持株比率を満たすことを必須条件とする」とされています。これは従前の一律25%から引き下げられたものです。また「時価総額での評価」も大陸の様々な企業を呼び込む要因になります。これにより、大陸の企業が香港上場して資金調達するための敷居が低くなったことになります。
4.コーナーストーン投資による株式六か月保有の規定はそのまま続行されることになりました。つまり、信頼ある機関投資家や著名な個人投資家が事前に発行企業と株式購入契約を結び一定数量を約束する投資方式を採用する場合、ロックアップ期間六か月は変えないということです。
こうした動きで香港証券取引所は何を目指しているのでしょうか?単なる規制緩和ではなく、より柔軟でありながら、多様な企業が香港上場する機会を増やし、同時に透明度の高い制度を構築して、今後も香港の金融センターの位置を確保するための、継続的な試みだと言えるのではないでしょうか。
継続的な一般保有株式の適切な量を定めるという意見に対しては、さらに一般からの意見募集の期間を設け、10月1日(中華人民共和国国慶節の日)まで受け付けるとのことです。証券取引市場と世間の景気は必ずしも同期しているとは言えませんが、チャンスのないところにはお金は流れて来ないのも確かです。そんなふうに思うと、この香港が今後も活気のある都市であることを願うばかりです。香港証券取引所では一昨年初の女性CEO陳翊庭ボニー・チャン氏が就任し、上場部門のプロジェクトで大きな貢献をしていると言われています。また上場部門の責任者である伍潔鏇ジェシカ・ンー氏も、今回の制度改革を通じて、IPOの価格決定および配分メカニズムの安定性を高め、様々なタイプの国内外投資家のIPO参加ニーズをバランスよく満たしたいと述べています。
わたしたちからは、これからも「ちょっと気になる香港」をお伝えしていきたいと思います。

以上出典:
http://www.aastocks.com/tc/mobile/news.aspx?newsid=NOW.1457935&newssource=AAFN