【香港時事討論 Vol. 1】
ここ数ヶ月の香港の動向について
(香港ジャーナリスト:Joshua Yamashita)
メディアやSNSでは、デモや暴動などの動画や画像ばかりが取り上げられているが、根幹は、逃亡容疑者を何処で裁くかという司法上の問題である。
日本国民なら三権分立は民主主義の国・地域なら存在していると当たり前だと思うのだけれど、実は香港にも中国大陸にもない。
そうは言っても、香港は英国植民地時代からの法律システムがあるので、『容疑者』だからといって適切な審理なしで引渡し出来るようにはなっていない。
香港は個々の法律があるのではなくて、香港条例( Hong Kong Ordinances )というものに、新たな章が追加・改訂される体系になっている。
これは判例に重点を置く、英連邦の法律体系がそのまま香港に導入されて、1997年以降も維持運用されているからである。
時系列で見ると、逃亡容疑者引渡条例(条例の第503章)というものが、1997年に作られ、それが2019年の2月に大陸中国への引渡条件を繰り込む形で改訂が提案された。
ところが、その内容たるや、立法議会や裁判所の同意なしで、香港行政特別区の行政長官の裁量で、中国大陸当局に容疑者を引き渡す内容になっているために、まず香港の法廷弁護士から反対意見の声明が発表された。
それから半年経っても、改定案の見直しが討議されることなく、ゴリ押しで可決しようとする行政側の動きをきっかけに、今回の反対行動が始まったのだった。
つまり反対を表明するのは、一般市民が最近始めたことではなく、2019年3月から法律の専門家から既に始まっていたのであって、ではいったいこの半年間、香港政府は何をしていたのか。
「条例改定案を見直しもせずに、なぜ中央政府におもねるように改定案可決を急いでいるのか」という疑問が残る。
<逃亡容疑者引渡条例>の現行条文
(中国語版・英語版共にオンライン上で閲覧可能)
https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap503
同上の改定案が提出されたことを報道する、South China Morning Postの英文記事