【香港ローカル ニュース Vol. 29】
新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大する中、日本でもマスクを買うために薬局開店前から行列する姿が見られたり、香港でも薬局やドラッグストアには午後になると「マスク・消毒剤 売切れ」の掲示が出ていたりします。また、香港では個人輸入の薬局も多く、有効期限が切れて汚染されたインドネシア製のマスクが市場に出て問題になったりしています。
新型肺炎の拡大で、社会生活全体に影響が出ており、集まって食事をするレストラン従業員の中から感染確定者が出て、しゃぶしゃぶ店などが臨時休業になったり、事務所内での感染を防ぐために中小企業の経営者が従業員に対して有給休暇をすべて消化する形で出勤しないよう促し、結局自宅に閉じこもるしかない人も大勢出ています。確かに外出しないことがウイルス感染拡大防止には有効ですが、仕事がなくて収入が激減してしまう職種の人が多いのも事実です。
香港の各学校は、2月25日時点の教育署の発表で、更に4月20日まで休校することになりました。
新型コロナウイルス感染確定者 増える一方に
【武漢肺炎＝新型コロナウイルス】感染確定者の住所分布図 香港東区14件でトップ。ワンチャイ11件で二番目。
衛生署・衛生防護センターの資料によると、これまでに74件の感染確定者が発見され、そのうち3件は香港の地域住民と接触していない、香港外から持ち込まれた事案である。その他の患者発症者を住居別に見ると、一番目と二番目に多いのは香港島東区とワンチャイで、それぞれ14件、11件となっている。二つの合計だけで全体の三割を占めており、区の中で複数の感染者のグループは、事件報道された「しゃぶしゃぶ家族」と、高齢者が密閉空間に集合する仏教組織「福慧精舎」などが含まれており、その他にいくつか感染源不明の事例がある。
『立場新聞』 The Stand Newsは香港での新型コロナウイルス感染者の居住地資料を集計した。74件のうち、3件は羅湖口岸（陸路のボーダー）、西九龍高速鉄道駅（オースティンロードの西端に出来た中国大陸への直通電車の新駅）、「ダイアモンドプリンセス号」から政府チャーター便で帰国後発症した、第1、第7、第71の事案で、当人は自宅に戻ることも地域住民との接触なく隔離されている。残る71件のうち、14件と11件が東区とワンチャイの住人で、香港全区の中でも上位２つに数えられる。これまでに発見された4件の事案は、北角ノースポイントの「福慧精舎」仏堂に関連が疑われており、4名の患者の住居はそれぞれ、小西湾Siu Sai Wan、天后Tin Hau、柴湾Chai Wan、北角North Pointに分かれている。区内には更に4件の感染経路不明の事案がある。ワンチャイ区では、既にメディアで報道されて話題になっている1月26日にしゃぶしゃぶの会食を開いて11人の家族が感染した「しゃぶしゃぶ家族」がいる。感染者は主にワンチャイとコーズウェイベイに暮らしており、ワンチャイ区での確定感染者11事案の10件を占めている。
【香港の行政上の区の大きさは、居住人口とは関係ありません】
その他記録に上がっている9件の葵青区（九龍西側）が第三に感染者が多く、青衣長康邨康美樓Tsing Yi Island, Cheung Hong Estate, Hong Mei House（政府の公団住宅）が排気パイプの設計不良でひとつのビルの複数階で感染者が出た。その内には第12にリストアップされた事例、また同住宅ビルの3階07室に関連する感染グループが含まれている。この他、觀塘區（九龍東側）でも8件の感染事例が出ており、三つの感染者グループの中で、6件は感染源が不明。そこには感染確定者として最初の事例の48歳警察官が含まれている。
連日、メディアに登場している衛生防護センター・伝染病処チーフの張竹君女史（医師）は最近の記者会見の会上で、何度か東区の感染者数の上昇が続くことに関して、香港ではもう感染爆発が起こっているのではないかと質問が出されたが、同女史はそのような見方を否定し、東区は「多いような感じがする」のは、数件の大型感染者グループが現れたからであって、そもそも土地の狭い香港で、しかも人の流動性などの要因から、香港の各区で感染源が特定できない事例があり、どの区に感染者が特に多いとは言えないとしている。
出典：香港立場新聞 The Stand New（2020/2/23 — HKT 21:37）
オンライン購入のマスク、品物が届かず詐欺の疑いで数百人が販売者の会社へ押寄せる
今月頭にネットショップでマスクをオーダーした多くの市民が、まったく品物が届かない・オーダーと違うなどで詐欺に遭った疑いを持った。26日時点で数百人の市民が続々と油塘 Yau Tong (同名の地下鉄駅がある、九龍半島東の工業地区)の工業ビルにあるオフィスに押し掛け、現金で返金を迫る騒ぎとなった。駆けつけた市民は、複数のフロアの階段や廊下にまであふれた。
警察が現れると、会社の責任者が姿を出し、「手元には5万香港ドルしかないので、百人とちょっとの市民にしか返金は出来ない」と事情を説明し、その他の返金は別途案内すると述べた。
立法議会の議員である譚文豪と、油塘区議会議員が現場に駆けつけ状況を理解したところでは、「何者かによって詐欺に及んだ可能性は排除できないこと、警察と税関には通報済みである」と述べた。
出典：香港電台網站 rthk.hk 中文ニュース（2020-02-26 HKT 22:57）
https://news.rthk.hk/rthk/ch/video-gallery.htm
上司に気兼ねから、多くの日本人が病気を押して出勤
【インタビュー取材】
中国大陸、香港、台湾からの観光客が先月、豪風のごとく押し寄せて日本国中のマスクを買い漁り、マスクメーカーは生産を24時間フル稼働にまで強化しても、国内外からの膨大な需要には応対しきれていない。数日前、記者は伯川星矢さんと共に東京都内のドラッグストアを見にいったところ、マスクの棚が空だったのは想像通りだったが、消毒剤、消毒剤を作る原料までが見事に売切れ状態になっていた。消毒用品が手に入らなかった伯川さんは、止むを得ず16リットルの消毒用アルコールをネットオーダーして、香港大学監修の作り方で手の消毒液を作ることにした。
（注：伯川星矢/はくがわせいや/さんは、陳姓の香港人の父親・伯川姓の日本人の母親の香港生まれのハーフで、広東語を母語とし、18歳で留学のため日本に来て十数年になる。
香港人の報道記者の目から見た日本：有給休暇を申請しづらい日本の労働文化
東京に住んでいれば、隣にいる日本在住の香港人の伯川星矢さんのように、万策尽くしてこれから来るかもしれないローカル社会での感染爆発に立ち向かうしかない。人によっては家にあるマスクの備蓄量を数えたり、会社に申請を出して半分の時間は自宅勤務している。とはいえ、日本国内で香港人は少数派であり、日本が圧倒的多数。町に出てみても咳き込んでいてもマスクを掛けていないサラリーマンを見かけるのも、パン屋のパンが外気に触れるような陳列をしているのを見かけるのも、普通。筆者は、武漢肺炎もインフルエンザも大して変わらないという日本人が言うのを聞いたことがあり、使ったマスクを何の気なしにポケットにいれ、また出して使っている様子も目撃した。
日本政府はさきに四名の肺炎患者の感染確認を発表した。和歌山の医師は解熱剤を呑んで往診を続け、千葉の20代のサラリーマンは発熱してからも電車で通勤をしており、東京の40代感染者は熱が出てからも新幹線に乗って愛知県に出張、横浜の消防隊員は患者の搬送を続けていた。国際社会が持つであろう疑問は、「日本人はなぜ熱があっても出勤するのか」だろう。
実際のところ、日本国内で従業員に有給休暇を出す会社は極めて少ない。多くは従業員に年次休暇や無給の休暇を使うよう求めており、さらには上司から自分の健康管理能力不足を疑われるのを恐れて、そのため日本人は多くの場合、病気を押して出勤する。日本も最近は国内市場を開放して、海外からも優秀な人材を取り込もうとしている。これは国内の労働人口の高齢化に対処するためだ。もし日本が本当に世界水準に合わせて行こうとするつもりなら、職場がまず明治維新バージョン２を実施するべきなのかもしれない。
■記者：廖梓霖
出典：『アップルデイリー』2020.02.24 02:20(HKT)
https://hk.news.appledaily.com/local/20200224/KRTNZKEKRYHSFK2N6JFST4LKQQ/